発達障害の基礎知識
発達障害について
2005年4月に発達障害者支援法が施行され、それまで一般的に大人にはないと思われていた発達障害者の支援が行われるようになりました。
『発達障害者支援法』とは、これまで既存の障害者福祉制度の谷間に置かれ、その気付きや対応が遅れがちであった自閉症・アスペルガー症候群、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)などを「発達障害」と総称して、それぞれの障害特性やライフステージに応じた支援を国・自治体・国民の責務として定めた法律です。(厚生労働省HPより)
厚生労働省 発達障害情報センター
www.rehab.go.jp/ddis/index.php?action=pages_view_main
文部科学省 特別支援教育について(発達障害の定義)
www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm
ADHD(注意欠陥多動性障害)について
ADHDは多動性、不注意、衝動性を症状の特徴とする発達障害の一つであり、DSM-IV(アメリカ精神医学会)による正式名称は注意欠陥・多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)と呼ばれています。
ADHDは脳神経学的な障害と言われ、成長と共に表面上見える多動性が目立たなくなり、問題行動が矯正されることもある為に、これまでは成人すれば問題がない障害であると思われてきました。
しかしADD(不注意優勢型)のような多動が目立たないタイプの子供も多くいる事や、成人した後にも脳の機能的な障害からくる不注意や衝動的な言動などは引き続き残ることに加え、時間管理、金銭管理など、物事に対するコントロールや対人関係が難しい事、さらには過去の失敗体験の積み重ねや生育環境、家族関係の悪さなどから、二次障害としてウツを始めとする精神疾患、人格障害などを引き起こしている例もあり、成人してもなお、引き続き生活に困難さを抱えていることが報告されています。
ADHD(注意欠陥多動性障害)の診断基準(DSM-Ⅳ)
ADHDの診断はA.B.C.D.E.に該当することが必要
A. (1)か(2)のどちらか
(1) 以下の不注意の症状のうち6個以上が6ヶ月以上続いたことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応しないもの
不注意
a.学業、仕事、その他の活動において、綿密に注意することができない、または不注意な過ちをおかす
b.課題または遊びの活動で注意を持続することが困難である
c.直接話しかけられた時に聞いていないようにみえる
d.指示に従えず、学業や職場での義務をやり遂げることができない(反抗的な行動または指示を理解できないためではなく)
e.課題や活動を順序だてることが困難である
f.(学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することを避ける、嫌う、またはいやいや行う
g.課題や活動に必要な物(例えばおもちゃ、学校の宿題、鉛筆、道具など)を紛失する
h.外部からの刺激によって容易に注意をそらされる
i.毎日の日課を忘れてしまう
(2) 以下の多動性―衝動性の症状のうち6個以上が少なくとも6ヶ月持続したことがあり、その程度は不適応で、発達水準に達しない
多動性―衝動性
a.手足をそわそわと動かし、またはいすの上でもじもじする
b.教室や、その他座っていることを要求される状況で席を離れる
c.余計に走り回ったり高いところへ上がったりする(小児以外では落ち着かない感じの自覚のみに限られることもありうる)
d.静かに遊んだり余暇活動に従事することができない
e.じっとしていなかったり、「エンジンで動かされるよう」に行動する
f.しゃべりすぎる
g.質問が終わる前に出し抜けに答えてしまう
h.順番を待つことが困難である
i.会話やゲームにおいて他人の邪魔をしたり干渉する
B.多動性―衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳未満に見られる
C.これらの症状による障害が複数の状況下(例えば学校と家庭)において見られる
D.社会、学業、職業等の機能において臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在する
E.その症状は広汎性発達障害、統合失調症、その他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(たとえば気分障害、不安障害または人格障害など)ではうまく説明できない。
広汎性発達障害について
社会性に関連する領域にみられる発達障害の総称で、自閉症スペクトラムともいいます。小児自閉症、アスペルガー症候群、レット症候群、特定不能の広汎性発達障害、その他が含まれ、次の3領域の発達における質的異常を特徴とします。
- 相手の気持ちがつかめない、場にあった行動がとれないなど、対人的相互反応における障害
- 独特な言葉使い、会話をつなげないなどコミュニケーションの障害
- 行動、興味、活動が限定していて反復・常同的
これらの異常は幼児期早期から、家庭内および社会的場面で広く観察されます。具体的な現れ方は発達とともに変化しますが、大人になってもこれらの特徴はもち続けます。
自閉症、アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラムもここに含まれます。
自閉症の診断基準(DSM-Ⅳ)
上記(1)(2)(3)から合計6つ(またはそれ以上)、うち少なくとも(1)から2つ、(2)と(3)から1つずつの項目を含む。
(1) 以下のうち少なくとも2つにより示される対人的相互反応における質的な障害:
a. 目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなど、対人的相互反応を調整する多彩な非言語性行動の使用の著明な障害。
b. 発達水準に相応した仲間関係を作ることの失敗。
c. 楽しみ、興味、成し遂げたものを他人と共有することを自発的に求めることの欠如。
(2) 以下のうち少なくとも1つによって示される意思伝達の質的な障害:
a. 話し言葉の発達の遅れまたは完全な欠如。
b. 十分会話のある者では、他人と会話を開始し継続する能力の著名な障害。
c. 常同的で反復的な言語の使用または独特な言語。
d. 発達水準に相応した、変化にとんだ自発的なごっこ遊びや社会性を持った物まね遊びの欠如。
(3) 行動、興味および活動の制限され、反復的で常同的な様式で、以下の少なくとも1つによって明らかになる。
a. 強度または対象において異常なほど、常同的で限定された型の1つまたはいくつかの興味だけに熱中すること。
b. 特定の機能的でない習慣や儀式にかたくなにこだわるのが明らかである。
c. 常同的で反復的な衒奇的運動。
d. 物体の一部に持続的に熱中する。
アスペルガー症候群の診断基準(DSM-Ⅳ)
(1) 対人的相互反応における質的な障害で以下の少なくとも2つによって明らかになる:
a. 目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなど、対人的相互反応を調節する多彩な非言語性行動の使用の著明な障害。
b. 発達水準に相応した仲間関係を作ることの失敗。
c. 楽しみ、興味、成し遂げたものを他人と共有することを自発的に求めることの欠如。
d. 対人的または情緒的相互性の欠如。
(2) 行動、興味、および活動が制限され、反復的で常同的な様式で、以下の少なくとも1つによって明らかになる:
a. 強度または対象において異常なほど、常同的で限定された型の1つまたはいくつかの興味だけに熱中すること。
b. 特定の機能的でない習慣や儀式にかたくなにこだわるのが明らかである。十分会話のある者では、他人と会話を開始し継続する能力の著明な障害。
c. 常同的で反復的な衒奇的運動。
d. 物体の一部に持続的に熱中する。
LD(学習障害)について
読字障害
A. 読みの正確さと理解力についての個別施行による標準化検査で測定された読みの到達度が、その人の生活年齢、測定された知能、年齢相応の教育の程度に応じて期待されるものより十分に低い。
B. 基準Aの障害が読字能力を必要とする学業成績や日常の活動を著名に妨害している。
C. 感覚器の欠陥が存在する場合、読みの困難は通常それに伴うものより過剰である。
書字表出障害
A. 個別施行による標準化検査(あるいは書字能力の機能的評価)で測定された書字能力が,その人の生活年齢,測定された知能,年齢相応の教育の程度に応じて期待されるものより十分に低い。
B. 基準Aの障害が文章を書くことを必要とする学業成績や日常の活動(例:文法的に正しい文や構成された短い記事を書くこと)を著名に妨害している。
C. 感覚器の欠陥が存在する場合、書字能力の困難が通常それに伴うものより過剰である。
算数障害
A. 個別施行による標準化検査で測定された算数の能力が、その人の生活年齢,測定された知能、年齢相応の教育の程度に応じて期待されるものより十分に低い。
B. 基準Aの障害が算数能力を必要とする学業成績や日常の活動を著名に妨害している。
C. 感覚器の欠陥が存在する場合、算数能力の困難は通常それに伴うものより過剰である。
運動能力障害について
発達性協調運動障害
A. 運動の協調が必要な日常の活動における行為が、その人の暦年齢や測定された知能に応じて期待されるものより十分に下手である。これは運動発達の里程標の著名な遅れ(例:歩くこと、はうこと、座ること)、物を落とすこと、” 不器用”、スポーツが下手、書字が下手などで明らかになるかもしれない。
B. 基準Aの障害が学業成績や日常の活動を著明に妨害している。
C. この障害は一般身体疾患(例:脳性まひ,片まひ,筋ジストロフィー)によるものではなく、広汎性発達障害の基準を満たすものでもない。
D. 発達遅滞が存在する場合、運動の困難は通常それに伴うものより過剰である。
コミュニケーション障害について
表出性言語障害
A. 表出性言語障害表出性言語発達についての個別施行による標準化検査で得られた得点が、非言語的知的能力および受容性言語の発達の得点に比して十分に低い。この障害は、著しく限定された語彙、時制の誤りをおかすこと、または単語を思い出すことや発達的に適切な長さと複雑さを持つ文章を作ることの困難さなどの症状により臨床的に明らかになるかも知れない。
B. 表出性言語の障害が、学業的または職業的成績、または村人的意志伝達を妨害している。
C. 受容-表出混合性言語障害または広汎性発達障害の基準を満たさない。
D. 精神遅滞や言語-運動または感覚器の欠陥、または環境的不備が存在する場合、言語の困難がこれらの問題に通常伴うものより過剰である。
受容-表出混合性言語障害
A. 受容性および表出性言語発達についての、個別施行による標準化検査で得られた得点が、非言語性知的能力の標準化法で得られたものに比して十分に低い。症状は、表出性言語障害の症状および単語、文章、特定の型の単語、例えば空間に関する用語の理解の困難を含む。
B. 受容性および表出性言語の障害が、学業的または職業的成績、または対人的意志伝達を著しく妨害している。
C. 広汎性発達障害の基準を満たさない。
D. 精神遅滞や言語-運動または感覚器の欠陥、または環境的不備が存在する場合、言語の困難がこれらの問題に通常伴うものより過剰である。